一人横綱・稀勢の里休場 貴景勝戦で右膝負傷 進退問題が再燃か

九州場所初日から4連敗していた稀勢の里がついに途中休場を発表した。

今場所は白鵬、鶴竜の2横綱が初日から休場となり、昨年夏場所から8場所連続休場し、進退のかかった先場所10勝を挙げ再起したばかりでの一人横綱の重圧。

なんとか4日目まで出場したものの4連敗となり、ついに休場を申し出た。

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今場所の稀勢の里

完全復活を目指した今場所、「優勝宣言」が出るほど仕上がりに自信を見せていたものの、いざフタを開けてみたら初日の黒星スタート。

しかも倒れた際、右ひざを強打して負傷、連日その痛みをおさえて取り組み続けて4連敗。


一人横綱で休むわけにはいかない、と頑張ったものの初日の負傷は気力ではカバ-しきれなかったのだろう。

【今場所の取組結果】

1日目:貴景勝:はたきこみ:21秒
2日目:妙義龍:よりたおし:34秒
3日目:北勝富士:つきおとし:19秒
4日目:栃煌山:すくいなげ:6秒

「体が続かなかった」稀勢の里の本音だ。

「非常に場所前に調子良くできたけど初日の相撲で新しいところを痛めてしまった。2日目以降、強行したけれど本来の相撲と違った」

この場所前の出稽古の相手が「妙義龍」「北勝富士」らで稀勢の里にとってはやりやすい相手。

報道陣に負ける姿を見せたくないために選んだ相手だったとも言われている。

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稀勢の里の今後

8場所連続休場明けの9月の秋場所では10勝5敗。


進退がかかっていた場所だったので好成績ではないにしても、とりあえずは土俵人生の危機を逸したはずだった稀勢の里。


ところが、今回の休場を受けまた進退問題が再燃するのはほぼ確実となってしまった。

「一人横綱で迎えた場所だったが、ファンの方には本当に申し訳ない。悔しい気持ち。最後まで務めることが責任だと思っていたが、体が続かなかった」

悔しそうに話す稀勢の里。

「いまはしっかり痛めたところを治して、そこから考える。また土俵に戻れるように、しっかりやっていくだけ」

「もう一回チャンスをもらいたい。このままでは終われない。チャンスをください」そう言って師匠の田子ノ浦親方(元前頭隆の鶴)に頭を下げたという。

進退がかかる瀬戸際を認識しているからこそ出た切実な言葉なのだろう。

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日本人としての一人横綱『稀勢の里』

横綱は休場が続いても、負け越しが続いても降格することはない。


よく言えば、一度横綱になってしまえば力士人生最後まで横綱のままでいられる。


反対に成績を出せない状態が続くとどんなに若くても引退せざるを得なくなる。


それが横綱制度である。

昭和28年、当時の横綱「千代の山」が成績不振に苦しみ“横綱返上”を申し入れ、“大関へ降格してほしい”と訴え、相撲協会を慌てさせたというが、降格制度導入には至らず現在までずっと続いている制度。

稀勢の里にとっては来年の初場所が正念場となるのは間違いない。

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角界からの助言

【田子ノ浦親方】

厳しいことを言われると思うが稀勢の里の人生。

もう1度結果を出して応援してくれる方に恩返しするべき。

初心に戻って体と心を充実させて土俵に戻ってきてほしい。

【貴闘力】

稀勢の里はかつての大横綱「大鵬」や「北の湖」、「貴乃花」とは違う。

「左を差して上体が上がる、受けて立つ相撲。この形で行ったら引退しかない」と感じていると話す。

かつて貴乃花が勝てなくなった時、兄弟子だった貴闘力の意見を聞いて相撲の形を変え、ひたすら稽古に励み復活したというエピソードを語った上で「稀勢の里は今のままやっているようじゃ、辞めなきゃいけない」とも話した。

【尾車親方】

稀勢の里にとって次に出る場所が“最後のチャンス”と覚悟を決めるしかない。

死に物狂いで稽古した?

違う、甘さがあったからこういう結果になった。

私が膝のけがで苦しんだ時、背中を押してくれたのは家族とファンの笑顔だった。

【玉ノ井親方】

左手一本で勝負に行くのではなく、右も使って左をいかすような相撲を取らないと。

稽古で場数をこなして、いろいろなタイプの力士と稽古することで相撲内容は良くなっていく。

優勝するつもりでいかないと。

【芝田山親方】

もう1回奮起してほしい。ただ途中休場を続けるわけにはいかない。

横綱というものは休めば休むほど厳しくなる。

【阿武松親方】

いいところまで攻めた。でも白星につながらない。

立て直してもう1回再起をかけることを願う。

【藤島親方】

自分のことだけではなく横綱の価値も考えるべき。

横綱は内容のある強い相撲で勝つことが責務でもある。

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横審の考え

北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は、完全復活には今場所が真価が問われる場所だった。

「そこで4連敗して休場となったら何か考えないといけない」と発言。

「横綱の第一条件である強さが満たされない状態が何場所も続いている。これを取り戻す気力と体力を持続できるか心配している」とコメントした。

横審は休場が多かったり成績がふるわない横綱には「激励」「注意」「引退勧告」などを発動できる。


横審委員は今場所千秋楽の土俵を視察に訪れ、定例会合を翌日(26日)に福岡市内で開く予定。

協会関係者によると決議が出た場合、横審委員が稀勢の里を委員会へ呼んで、直接勧告する可能性も否定はしなかった。

実際、横審は平成11年秋場所を皆勤しながら7勝8敗と負け越した3代目横綱若乃花を初めて委員会へ出席させ「体を治したうえで進退を懸けて土俵に上がってほしい」と休場を勧めた例もある。

稀勢の里の進退問題は、再燃必至の状況となった。

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最後にまとめ

がむしゃらに稽古して横綱になったのが稀勢の里。

親方衆は「原点に戻れ」と愛のある言葉をかけている。

19年ぶりに日本人横綱になった稀勢の里だからこそ期待されるのだろう。


この状況がもし外国人横綱だったらその世論はどうだったろうか。

「能力があってやめるのはもったいない」「来場所を期待したい」

同じように言ってもらえただろうか。

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